大判例

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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)4500号 判決

(争いのない事実)

一、原告がその主張する実用新案権の権利者であること、右実用新案権に関する願書に添付した明細書に記載された登録請求の範囲が原告主張のとおりであること、および被告東京歯科産業株式会社がイ号図面および同図面説明書記載の殺菌器を製造し、被告ら三名が右殺菌器を販売していることは、当事者間に争いがない。

(イ号図面記載の殺菌器について)

二、前掲当事者間に争いのない登録実用新案第四五〇九九二号(この項において、以下、本件実用新案という。)における登録請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第六号証の「実用新案の性質・作用及効果の要領」の項の記載を参酌して考察すると、紫外線殺菌器に関する本件実用新案の要部は、「(一)前面に扉1を具えた箱体2内に棚3を数段架設するとともに、その棚の各前段と箱体内の奥面4との間に適当の間隔を設けて、該部分中央に殺菌ランプ5を縦設したこと、(二)ランプの背後に反射鏡6を装置したこと、および、(三)棚とランプ装置との間に保護金網を設けたこと」にあることが認められる。

被告らは、棚とランプ装置との間に設けた保護金網は本件実用新案の構成上の要件ではなく、第二義的なものにすぎないと主張するが、その主張を裏づけるに足る何らの資料はない。

しかして、イ号図面記載の殺菌器が、棚と殺菌ランプ装置との間に保護金網を設けていないことは、原告主張の同号図面説明書の記載自体から明らかであり、この点において、本件実用新案における要部の一つを欠くのであるから、進んでその他の要件について検討するまでもなく、イ号図面記載の殺菌器は、本件実用新案の技術的範囲に属するものとはいえないといわざるをえない。

したがつて、イ号図面記載の殺菌器は、原告の実用新案権を侵害しないものというのほかなく、被告らが、右殺菌器を製造または販売して原告の権利を侵害したことを前提に謝罪広告の掲載を求める原告の請求は、進んでその余の点について判断するまでもなく理由がないものといわなければならない。

(ロ号図面記載の殺菌器について)

三、被告らは、当初ロ号図面および同図面説明書記載の構造の殺菌器を製造または販売していたことにつき、これを認め、後にこの自白を撤回したことは記録上明らかであるが、証人山中一の証言によれば、被告東京歯科産業株式会社は、ロ号図面および同図面説明書記載の棚と殺菌ランプ装置との間に保護金網を設けた構造の殺菌器を製造販売していないことが認められ、他にこの認定を覆すに足る証拠はないから、被告らがした前記自白は事実に相違し、したがつて特段の事情の認むべきもののない本件においては錯誤に出たものとみるを相当とし、被告らの右自白の撤回は有効というべきである。

したがつて、被告らがロ号図面記載の殺菌器を製造または販売したとして謝罪広告の掲載を求める原告の請求は、右製造販売の事実を認めえないこと前認定のとおりである以上、進んでその余の点について判断するまでもなく、理由がないものといわなければならない。

(むすび)

四、以上説示のとおり、原告の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとする。

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